
私は理想を胸に上京した人たちが東京で収まるところに収まる物語が好きだ。Amazonオリジナルの『東京女子図鑑』や『東京男子図鑑』といったものが有名である。最近そんな類の短編小説を見つけて読んだ。麻布競馬場の『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』である。
この本を読んで改めて東京で暮らしたいなと思ったが、そんなことよりもこれらのストーリーに共通することに私は気が付いた。主人公たちはみな自分が浅はかなために挫けるのであって、東京は何の関係もないのだ。ただ絵になるというだけだ。
東京女子図鑑の主人公は、不倫を繰り返していたら婚期を逃し結婚相手を妥協(結局不倫される)。東京男子図鑑の主人公は、商社勤めで調子に乗っていたら出世争いに負け転職し減給。どちらも身から出た錆である。
違うところで生活をしていたら違う人生があったのかもしれないが、四畳半神話大系の樋口清太郎も、「今ある自分以外何者にもなれない自分を認めなくてはならない」と言っている。私も早いところ港区に引っ越し、収まるところに収まりたいと思う。
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