歩け、夕暮れの京都堀川通

私は大学時代の4年間を京都で過ごした。とはいっても、「異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきた」(森見登美彦『四畳半神話大系』角川文庫)。そんな私も、大学院受験が終わり、京都での生活が残り数ヶ月となると、一日一日があまりに惜しくなり、街に出始めた。

堀川通を駆ける

この頃、街に出るとはいっても、相変わらず惰眠を貪り昼夜逆転に陥っていた私は、夕方に目を覚ますことがよくあった。そんな日はいつも寺町商店街の古着屋を目指した。この時間になると、観光名所の拝観が終わり河原町に足を運ばないとやることがないからである。

かの有名な二年坂も18時にもなれば静まり返る

北野天満宮の南、北野商店街に住んでいたから、四条河原町までは片道5km弱である。愛用のクロスバイクを使うこともあったが、この頃は減量のために運動することを重じていたので歩いていた。

北野商店街の下宿を出て中立売通を東に歩く。堀川中立売を右に曲がり南下、四条堀川の交差点を左に曲がり、四条通を東に進めば寺町京極商店街に着く。

二条城の南東の角まで続く堀川の遊歩道が魅力的なのは言うまでもない。堀川商店街も歴史がありながらおしゃれな日用品店が入っていたりして面白い。二条城の外堀を見られるのも楽しい。また、通りが直線で道幅が広く、景色が開ているのも面白い。

晴れた日の夕方、堀川通を歩きながら、時折見られる京都らしい景色を通り過ぎるのは幸せな体験だった。もしかしたら、古着屋ではなく、堀川通を歩くことが目的だったかもしれない。思えば、商品が入れ替わっているはずがないのに、2日連続で同じ古着屋を回った夜もあった。