アニメ『四畳半神話体系』の名言が私に与えた教訓

森見登美彦 四畳半タイムマシンブルース

昨日、『四畳半神話大系』の16年ぶりの続編(?)が出版された。その名も、『四畳半タイムマシンブルース』である。私は、このホームページを作る時、人生を共にしていきたいと思う以下の文章をトップページに引用した。

不毛と思われた日常はなんと豊穣な世界だったのか。ありもしないものばかり夢見て、自分の足元さえ見ていなかったのだ。これは私が選んだ人生、私が望んだ結果である。

私は京都で四年間の大学生活を送ったが、あらゆる人との関わり合いを断ち、ただひたすら惰眠を貪っていたから、卒業も間近になって大学生活を大変後悔した。しかし、今思い返してみれば、それは大変幸せな大学生活だった。

例えば。大学時代、「体脂肪率が12%を超えたら男ではない」と考えていた私は、運動に精を出していたことがあった。毎日欠かさずランニングをしていた時期もあったが、当時の私のランニングコースは大変に贅沢なものだった。

北野商店街にある家(千本中立西入)から出発し、中立売通りを西に進んで、北野天満宮前の交差点を渡る。北野天満宮の東沿いを北に進んで、上七軒の入り口を右に折れる。上七軒を走り抜けたら今出川通を東に進む。千本今出川の交差点を右折、千本通を南に下り、千本中立売を右に曲がれば家に戻ってくる。一周2.3kmの短いランニングコースだから一回二周していた。

上七軒といえば、日本最古の茶屋街である。京都の中でも特に風情のある街ではあるが、祇園に比べて人通りは遥かに少ない。北野天満宮が拝観受付を終えた夕方は、ひっそりと静まり返って、華やかな夜への支度に入る。そんな時間に私は走ることが多かった。夕焼けに照らされた上七軒を走りながら、これから仕事に向かう舞妓さんとすれ違うこともあった。少し時間が遅くなると、料亭で食事をする舞妓さんの後ろ姿が見えることもあった。

当時は、決して気が付かなかった。異性との健全な交際こそ学生生活の全てだと考えていたから気が付かなかったのだ。まさに、「ありもしないものばかり夢見て、自分の足元さえ見ていなかったのだ。」しかし今なら分かる。私が選んだ人生の一選択肢は間違ってはいなかったのである。

森見登美彦ワールドに何度も出入りしているうちに、こんな大切なことに気が付いた。私にとって、『四畳半神話大系』は特別な作品である。