アニメ『四畳半神話体系』の名言が私に与えた教訓

不毛と思われた日常はなんと豊穣な世界だったのか。ありもしないものばかり夢見て、自分の足元さえ見ていなかったのだ。これは私が選んだ人生、私が望んだ結果である。

アニメ『四畳半神話体系』フジテレビ

豊穣な世界

私は京都で4年間の大学生活を送ったが、あらゆる人との関わり合いを断ち、ただひたすら惰眠を貪っていたから、卒業も間近になって大学生活を大変後悔した。しかし、今思い返してみれば、それは大変幸せな大学生活だった。

例えば。大学時代、「体脂肪率が12%を超えたら男ではない」と考えていた私は、運動に精を出していたことがあった。毎日欠かさずランニングをしていた時期もあったが、当時の私のランニングコースは大変に贅沢なものだった。

上七軒を駆ける

北野商店街にある下宿を出発、中立売通を西に進んで今出川通の交差点を渡る。北野天満宮の東沿いを北に進んで右折。上七軒を抜けたら今出川通を東に進む。千本今出川の交差点を右折、千本通を南に下り、千本中立売を右に曲がれば下宿に戻ってくる。一周2.3kmの短いランニングコースだから2周していた。

上七軒といえば、日本最古の茶屋街ではあるが、祇園に比べて人通りは少ない。北野天満宮が拝観受付を終えた夕方は、ひっそりと静まり返って、街全体が華やかな夜の準備に入る。そんな時間に私は走ることが多かった。

夕焼けに照らされた上七軒を走りながら、これから仕事に向かう舞妓さんとすれ違うこともあった。少し時間が遅くなると、料亭で食事をする舞妓さんの後ろ姿が見えることもあった。

当時は、決して気が付かなかった。異性との健全な交際こそ学生生活の全てだと考えていたから。まさに、「ありもしないものばかり夢見て、自分の足元さえ見ていなかったのだ」。しかし今なら分かる。私が選んだ選択肢は間違ってはいなかったのである。