京都は銭湯の宝庫であり、風情ある街の至る所に銭湯が点在している。私は京都で生活した4年間で8個しか銭湯を訪れなかったのだが、数少ない銭湯紀行の中で印象深い経験をした。
トイレありますか
舞台は京都東山にある柳湯。三条京阪駅から徒歩3分、築90年の町屋風の趣がなんとも京都らしい名銭湯で、夜に訪れると一昔前にタイムスリップしたのではないかと疑うような雰囲気を醸し出している。
入り口から男女に分かれているので男湯の入り口を入り、番台から降りて常連の仲間と世間話をしていたおじさんにお金を払った。準備が終わり裸になったところでトイレに行くことにした。しかし見当たらない。
おじさんにトイレの場所を聞くと、風呂に向かって右側の扉をまっすぐ行くように伝えられた。言われた扉を見つけ、暗い廊下を奥に進むと、畳敷きにこたつが置かれた部屋が現れた。
しかし、それだけではない。おじさんがコタツに入ってテレビを観ているではないか!!こちらは驚天動地であるが、おじさんは至って普通だと言った感じで奥にあるトイレを指差している。
私はおじさんの入るこたつとテレビの間を通って自宅のトイレを借り、もう一度同じところを通って銭湯に戻ったのである。この間私はずっと真っ裸なのだ。少し前。2019年の話である。